2015年4月25日土曜日

考えるよりも、まずはやれ!

櫻井杏理

春を迎え、年末以来2度の強化合宿を経験しました。初めて参加した年末の強化合宿では一つ一つの動きを掴むのに必死で、その動きを何とか真似ることだけに全てを注いでいた気がします。技にはこれだけの豊富なレパートリーが存在するということに圧倒されました。“気が付けば終わっていた―” 今振り返ってみても、初めての強化合宿はその一言に尽きると思います。
基礎練習の繰り返しが続きます

その後の冬季の練習では、強化合宿で詰め込んだ動き一つ一つに焦点を当てていきました。動かすタイミングや動きのスピードを確認し、ひたすらそれを繰り返す反復練習の積み重ねです。動きを頭で理論的に捉えて咀嚼しようとするよりも、まずは自身の身体でタイミングやスピードを体感することが最優先事項という共通認識が監督との間にありました。視覚・聴覚・触覚を研ぎ澄まし、身体が反射的に反応出来るようになるまではとにかく何度も繰り返す。それだけでも相当な時間を費やしていると思います。少しずつその感覚を掴み始めると、運動力学的な理論的解釈は不思議と深まっていました。“考えすぎるな!考えるよりも、まずはやれ!” 耳にタコができそうなくらい聞いてきた監督のこの言葉の真意に触れた瞬間でした。

春の強化合宿風景

そして迎えた春の強化合宿。レッスンを通して世界一の剣術の持ち主である香港のFung Ying Kiコーチと再び剣を合わせた時、完全に意表を突かれた気がしました。トップレベルの剣捌きやスピードを目の前にし、あることに気付かされたからです。

動きや流れを掴むだけで必死だった前回の経験から反復練習を重ね、一つ一つの動きやスピードを意識してきました。しかしながら、あくまで前回と比較すれば変化したとはいえ、本当の意味で “できるようになったこと”と胸を張って言えることは未だ何一つなかったのです。その気付きが、今回の合宿での最初で最大の収穫だったと思います。決して自信喪失などということではなく、その観点を競技生活でいかに維持することが出来るかが大きな鍵になると捉えているからです。

勝負の世界で生きる以上、戦いに勝利した時から初めて“出来ること”と“出来ないこと”が共存し始める気がしています。そのためには日々の練習の中で“何が、どうして出来ないのか”を自身で明確にしておかなければいけません。

この気付きを得た瞬間から、“気付けば終わっていた”という前回とは大きく異なり、一日が終わる度に “あと○日しかない” と残された時間の中で、世界一の技を体感し何か一つでも多くのことを吸収したいという捉え方に変化していました。そして、剣捌きのスピード感がまだ全く足りていないということ、レッスンでの動きをファイティング練習で生かしきれていないこと、コンスタントなパフォーマンスレベルを発揮できていないこと、ミスした後でも貪欲に攻め込めていないことなど、解消すべき問題点や課題を明確にすることが出来ました。
Kiコーチの丁寧な指導を受けました
Kiコーチとファイティング練習

現在は、合宿で徹底的に行った基礎の反復練習を元に、より実践的な勝つための練習に移行しています。ここでも圧倒的なスピード感を身に付けることは勿論のこと、自身で流れを作り相手をリードすることに重点を置いて取り組んでいます。改善すべき問題点を繰り返し確認し、とにかく実践することで身体が反射的に反応出来るようにするというスタンスは現在も変わっていません。

“いかに自分自身と向き合うことが出来るか”が競技者にとって必須条件となるのはどの競技にも共通して言えることだと思います。勝つために、勝つことだけを考え、勝つための練習を積み重ね、勝つイメージを鮮明化させること。大きな目標を掲げているからこそ、そこに到達するためには何をすべきか、短期目標やスケジュールを含めた綿密なプランニングを行い士気を高めていくことは、今の私にとって急務です。目標到達に向かって課題を細分化し、目的を持った上で日々の練習に取り組んでいきたいと思います。
 

しかし、“考えすぎるな!考えるよりも、まずはやれ!”はいかなる状況においても忘れてはいけない普遍的なテーマです。

強化合宿中、NHKの取材を受けました